遺産分割が進まないために空き家が発生した事例

どのようにして空き家が生まれるのか

今回は遺産分割が進まないために空き家が発生した事例について紹介します。
※公開する情報については必要な許可を得て掲載しています。

居住者は70代の男性、余命3カ月の宣告

事例提供者:70代男性 粟島様 (仮名)

とある地域の一軒家には粟島さんという70代の男性が1人で住んでいました。
独身であり、両親は既に他界し、兄弟はF県、K県に引っ越しをしていました。
(本人は三男、F県には次男、K県には長男が住んでいました。)

ある日、粟島さんはトイレを済ませると、便座に血液が付着していることに気が付き病院へ検査に向かいました。

すぐに検査入院を勧められて数日後には末期の直腸がんであることが発覚。
粟島さんは隣に住んでいる遠縁の親類を通じて、各兄弟に連絡を取りました。

粟島さんはK県に住む長男とは仲が悪く、F県に住んでいた次男とは交流がありました。

しかし、次男はすでに他界しており、その子供であるAさんが仕事の休暇を取り粟島さんの様子を確認しに来ました。

その後、粟島さんとAさんは医師から病状が深刻で余命は一カ月~二ヶ月と宣告を受けました。
こうして他に粟島さんのために動ける親族がいないため、Aさんは葬儀の準備や、K県に住む長男への連絡に奔走することになりました。

相続人の一人が認知症を発症していた

Aさんは粟島さんの寝泊りして身の回りの世話をしていました。

しかし、1カ月を過ぎたころ、粟島さんは病状が急変して亡くなってしまいました。

AさんはK県の長男親族に粟島さんの死去に関して連絡をしましたが、遠方であることや既に長男が初期の認知症であることが発覚していたため、葬儀はAさんと一部の遠縁の親戚のみで行われました。

その後は相続に関する手続きを進めるため、法務事務所に相談して財産を調査しました。
財産は大きく分けて2つで預貯金が900万円、粟島さんが住んでいた自宅の建物でした。

しかし、K県の長男親族に関しては粟島さんの住んでいた地域と非常に遠方であること、長男本人がすでに初期の認知症を患っていたこともあり、手続きがストップしてしまいました。

Aさん自身も会社勤めのため、いつまでも休暇を取って親戚の手続きをしているわけにはいきません。

各親族とも納得のうえで遺産の分割は折を見て進めるということに決定。
こうして粟島さんが住んでいた自宅は空き家になってしまいました。

本事例における空き家のリスク

本事例では相続人に該当する親族がそれぞれ異なる地域に住んでおり、遠方で物理的にも距離があります。

また、遠方の相続人に認知症の方がいるという理由で相続手続きがストップすることになりました。

結果として粟島さんが住んでいた自宅は空き家になってしまいましたが、この場合は2つのリスクが考えられます。

①空き家放置による一般的なリスク

空き家を放置することで朽廃が進行してしまい、建物の外壁が落下、災害時の破損による近隣住民への被害などが想定されます。

この場合は、所有者責任が発生するため、空き家の推定相続人が損害を背負う恐れもあります。

その他長期の空き家の放置は犯罪や不法投棄などの温床となる可能性もあり、そのリスクも各相続人が背負うことになります。

②煩雑な手続きが発生する恐れがある

本来であれば現段階で相続に関する手続きを進めるのがベストです。

しかし、様々な事情から相続手続きが行われずにストップすることも多く、結果的に空き家生まれているという実情があります。

事例ではK県に住む長男も高齢であるため、将来的に相続が発生した際にK県長男の相続人まで利害関係人となり、一層手続きが煩雑になると予測されます。

空き家の問題には相続の問題がセット、幅広い知識が求められる

今後空き家の問題に関しては相続の知識が必要になるパターンが多くなると予測されます。

特に昔の家庭では兄妹姉妹が多いことが珍しくなかったため、結果的に相続人も多くなり手続きが複雑化、親族間でのトラブルがあれば手続きがストップして不動産が空き家になるというパターンが考えられます。

不動産会社においても空き家対策を行ううえで、様々な事例について把握をしてベストな提案をできる能力が求められるでしょう。